固定バイアス

概要

エミッタ接地(エミッタ共通)回路の固定バイアスについての考察。実際の回路で固定バイアスが使用されることは少ないが、設計が容易なのでLTSpiceでシミュレーションしてみる。

ギャラリー

固定バイアス回路の基本回路

固定バイアス回路の実際の回路

固定バイアスについて

エミッタ接地回路(最近はエミッタ共通回路と呼ばれ方が多い)のバイアスの一種で、固定バイアスを検討する。

正しい設計は、hパラメタから求めるのだが、はっきり言っておいらはよく理解できていない。とりあえずおいらが知っている方法を記載する。

固定バイアスは回路は簡単だが、安定度が悪かったり、トランジスタのバラつきがそのまま回路に影響を与えたりするので、実際に使用されることは少ない。

固定バイアスは2本の抵抗を使用した回路であるが、自己バイアスも抵抗2本で構成できる。

(もちろんそれぞれの抵抗値は異なるが)抵抗2本を使用するのであれば自己バイアスの方が安定性もよいので、自己バイアスを採用するのが現実的である。

ただ、固定バイアスの計算方法は比較的簡単にできる。そのため、まずは固定バイアスについて考察してみる。

前準備

ただし、設計を行うにあたり、あらかじめ以下の項目を知っておく(決めておく)必要がある。

  • トランジスタのhfe(直流増幅率)の値
  • トランジスタのVBE(ベースエミッタ間電圧)
  • トランジスタのコレクタ電流

想定した値

トランジスタのhFEはデータシート等で記載されているので、この値を参照する。 ただし、実際のhFEは、同じロットのトランジスタでも大幅バラつきがあるし、温度によっても変化するし、流す電流によっても変化する。 で、LTSpiceのトランジスタモデルには2SC1815等の日本製品は含まれていないので、2N2222を使用することにする。これはhFEが200として想定されている。 なお2N2222は、TO92プラスチックパッケージ版が秋月でP2N2222として入手可能。

トランジスタのVBEに関しては、シリコントランジスタの場合、おおむね0.6Vもしくは0.7Vと計算する場合が多い。 ただし、ダーリントントランジスタの場合は、パッケージの中に複数のトランジスタで構成されているので、0.6Vとは限らないので注意が必要。 厳密に言うと、VBEもトランジスタによって若干異なるし、流す電流によって変化するので、現実的には適当な値で割り切って計算する。 ここでは、0.6Vとして考える。

トランジスタのコレクタ電流は、あらかじめ動作させる電流を想定しておく必要がある。低周波・小信号増幅器の場合は1mAから5mAまでが多いようだ。 高周波・低信号増幅器の場合は、もう少し電流を多くする傾向にある。これは、ある程度電流を流した方がトランジスタのft(トランジション周波数)が高くなるためである。 パワーアンプになると、さらに多く電流を流す必要がある。 今回はコレクタ電流が2mAとして計算してみる。ちなみに2mAの根拠は無い。

固定バイアスの設計

固定バイアスの基本回路は以下のような回路になる。主要な部品は、ベース電流を決めるR1とコレクタ電流から出力を取り出すためのR2である。

固定バイアス回路の基本回路

実際の回路

ただし、実際には直流カットのコンデンサも必要だし、電源も必要。シミュレーションするための入力部分の必要なので、以下の回路を想定する。

固定バイアス回路の実際の回路

固定バイアスの抵抗値の求め方

固定バイアスの値を求める場合、以下の手順で計算する。

  1. コレクタ電流を決める。ここでは2mAとする
  2. 上記コレクタ電流から、抵抗R2の両端にかかる電圧が電源電圧のほぼ1/2になるような抵抗値を求める。
    電源電圧は9Vなので、この1/2は4.5V。4.5Vに2mA流すには、抵抗を2.25kになる。計算式は4.5V/0.002A=2250Ω。
    実際に2.25K(2250Ω)の抵抗はE24系列としては販売していないので2.2Kとする。
  3. コレクタ電流をhFEで割りベース電流を求める。
    コレクタ電流は2mAで使用するトランジスタ2B2222のhFEは200。したがってベース電流は0.01mA。計算式は0.002/200=0.00001A。
  4. 電源電圧からVBEを引いた値を元にして、抵抗R1を求める。
    電源電圧は9VでVBEは0.6Vならこの差は8.4V。8.4Vに0.01mA流す場合の抵抗は840K。計算式は8.4V/0.00001A=840000Ω。
    実際に840K(840000Ω)の抵抗は、E24系列としては販売していないので820Kとする。




 作成:2018/10/05 13:28:48  (作成
 更新:2018/10/05 23:06:16  (更新